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「劇中劇」とか「回想シーン」は扱いが難しいので、特別な表現が必要なのです。

_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/ [KID'S SIGNAL] キッズシグナル●第271号●2022年4月9日(土) _/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/ ------------------------------ このメールは木田茂夫のブログ「コトノハコトバ」でメール登録された方や、私の得意先の方々などに定期的に送信しているメールマガジンです。 現在はほぼ毎日配信しています。文具やマーケティングのアイディアなど多彩に発信しています。愛読よろしくお願いします。(配信解除は末尾にあります。) ------------------------------ %name_sei%さん、こんにちは。 今日は土曜日なので、ちょっと気分転換に、またエンタメ系の話題です。 長年、少年ジャンプを定点観測的に読んでいるので気づくことがいろいろあるのですが、少し前に紹介した「落語」のマンガ「あかね噺」で、少し面白い表現がありました。 それは物語の中で物語を紹介する「劇中劇」の表現です。 「あかね噺」は、落語のマンガなので、どうしてもマンガの中で「落語のネタ紹介」をしなければなりません。 この「世の中にあるものの紹介」というのは子供向けである少年マンガでは必須の要素で、スポーツ物などでは、ルール解説が必要ですし、ファンタジーものであっても架空の世界観をなんとかわかりやすく説明しなければなりません。 ただ、落語のネタというのは「ストーリー」を扱うものなので、ストーリーの中でまったく別のストーリーを解説するというのは、なかなかに難度が高いことなのです。 「あかね噺」では、そこを「筆絵で紹介する」というルールを作っていて「おお、これは良いぞ」と感心しているのです。落語という古典を紹介するのに「筆」を使うというのは、アイディアだなぁと感心しています。 実は、こういう「劇中劇」の表現というのは、物語が複雑になるので、この「筆絵で描く」などの「基本ルール」を定めておかないと、読者の側が混乱してわけがわからなくなりがちなのです。 「劇中劇」と似たものに「回想シーン」というものもあります。回想シーンに至っては回想といまの時間とで登場人物が同じであったりするわけですから、よほど上手に描かないと読み手は混乱の中にほおりこまれてしまう、ということになりかねません。 その点で、マンガ、とくにジャンプ連載のマンガでは、この20年前後でゆっくりと「回想シーンはコマの外をスミベタで真っ黒に塗る」という表現が一般化して定着しました。 当初は「スラムダンク」あたりがやりはじめた「そのマンガ特有の表現」だったのですが、コマの外を真っ黒にすることで、「黒いところは回想」とはっきりと分かる利便性が他の漫画でも引用され、いつのまにか定番の手法になりました。 昨年、一昨年と大ヒットしたアニメ「鬼滅の刃」も少年ジャンプの連載漫画でしたが、あのマンガは、敵である「鬼」が、どういう経緯で鬼になったのか? ということが回想シーンで挿入されることがひとつの特徴になっていました。 それも、この「コマ外の黒ベタは回想シーン」という基本表現技法が確立していたからこそ、気軽に挿入できた、ということなのです。「鬼滅の刃」の大ヒットも少年ジャンプで連載されてきた数々のマンガの試行錯誤なくしてありえなかった、ということなのです。 ちなみに、映画スターウォーズは、1~9まで全9作品がありますが、オリジナルストーリーを構築したジョージルーカスが脚本・監督した1~6までは回想シーンが一切ありません。多分、大人も子供も楽しめる作品を目指して回想シーンは入れないと決めたのだろうと思います。 逆にルーカスが監督しなかった7~9では昔の思い出や、過去の出来事がストーリーの重要部分を占めていたのでどうしても回想シーンが登場せざるを得ず、スターウォーズ特有の場面転換でワクワクさせる基本的な面白さが消失してしまったなと感じました。 このように、エンタメにおいては、読者や視聴者などの「受け手」の側との表現のルールをいかに共有できるか? というのがひとつの「ツール」として重要になる部分なのですね。その意味で、この「あかね噺」における「筆絵」が、今後、「劇中劇」を表現する場合の、ひとつのスタンダードになるんじゃないかな? と興味を持ってみているのであります。 ということで、今日はここまで。 ではまた明日。 --------------[KID'S SIGNAL No.271 -了-]--------------- もし、僕のメルマガを面白いと感じてくださったら、 共感してくれそうなご友人に、以下のアドレスとともに、 メルマガを紹介していただけると嬉しいです(*^_^*) よろしくお願いします! ●メルマガ:KID'S SIGNAL/ブログ:コトノハコトバ 記事サンプルと登録ボタンのページ http://www.kidashigeo.com/kotonohaselect.htm いつもありがとうございます。 木田 茂夫 :kids@kidashigeo.com

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