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ブラインドタッチは「ローマ字入力」以外を覚えたら、大変な苦痛に見舞われますよ。実体験のお話をします。
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[KID'S SIGNAL] キッズシグナル●第430号●2022年9月15日(木)
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ということで、昨日の予告通り、いま私が開発中の「ブラインドタッチ練習ソフトWEEK」についてのお話です。
まず、この練習ソフトは、「出来る限り短期間でブラインドタッチが身に付くように」と考えて作ったソフトです。
ですので、徹底して機能は削ぎ落してありまして、修得できる入力方法は「ローマ字入力」一択です。
他の入力方法の練習は一切できません。
なぜできないのかと言うと、現実的な意味で「無駄」だからです。
日本語を入力するための入力方式として、ローマ字以外は必要がないです。
なぜかというと、これまでの説明でも書いてきたように、人間は「文章を考える速度」というのがあって、その速度より速くに入力する必要は一切なく、ローマ字入力で充分に「文章を考える速度」を上回ることが可能だからです。
このことに関しては、少し実体験をお話しないと分かりにくいかと思うので説明します。
実は僕自身、ブラインドタッチは「JISかな」という入力方式で一番最初は身に付けたのです。23歳くらいの時だと思います。
当時勤めていた広告制作会社にあったワープロに付属の練習ソフトで練習をしました。
当時昼休みを利用して毎日30分ほどワープロに向かい、カナキーを一文字ずつ「一切キーボードを見なくても打てる」ように練習していったのです。
JISカナというのは、キーボードに刻印されているカナ文字を使って入力する方式で、ローマ字入力が、たとえば「か」なら「ka」と2ストロークかかるところを、いきなり「か」と打てるわけですから、多少は入力スピードが速くなるんです。
入力スピードが速くなった方が身に付けてから、うんと便利だろうと頑張って、毎日毎日コツコツと練習を積み重ねていったのです。
カナ文字ですから「50音」というくらいで、覚えるキーの数は50個を軽く超えます。なぜなら、ちいさな「ぁぃぅぇぉっ」というような文字も個別に打ち方を覚えないといけないからです。
毎日30分の練習で、ひと月をちょっと超えるくらい40日くらいですかね? なんとかやっとブラインドタッチで文章が打てるようになったんです。
それはねぇ、40日頑張ったんだから、打てるようになって感慨深いものがありましたよ。
「おおおお、やっとここまできたか。やったぞー!」と叫びたいくらいでした。
なので、すぐに仕事でワープロを使うようにし始めたんです。
し始めたんですが、その時にとんでもないことに気付きます。
みなさんどなたでも見聞きしていると思いますが、企業名というのはけっこうアルファベットで表記されるんですよね。たとえばHONDAとか、TOYOTAとか。
そうでしょ? アルファベット表記の企業って無茶苦茶に多いんです。
このアルファベットが、JISかなを覚えただけでは打てないんですよ。HONDAとか打つたびに、キーボードを見なくちゃいけない。なんじゃこりゃ!ですよ。
実はJISカナを覚えても、アルファベットに関しては新たにまったく別にブラインドタッチを覚えなおさないとしょうがないんです。
その事実に愕然とした僕は、仕方なしにアルファベット26文字のブラインドタッチ、そこからまた2週間くらいかけて練習して身に付けたんです。
ですから、「ブラインドタッチを身に付けるぞ!」と思って決心してから、なんと毎日30分以上練習して、一か月半もかかってしまったんです。
覚えたキーの数はカナ50音とアルファベット26文字を足しただけでも76文字。とんでもなくたくさんのキーを覚えないと実用の役に立たなかったんです。
それでもまぁ、一度覚えたブラインドタッチは、もうずっと使える技法だと思って安心していたわけです。
ところが!
その制作会社をやめて、次に化粧品会社の広報に転職したんですが、その会社のワープロは「オアシス」という機械だったんです。
ご存知の方もおられるかも知れませんが、富士通のワープロでして、入力方式は、JISかなではなく「親指シフト」という独自方式です。
なんでやねん!
と僕は叫びましたね。
せっかくひと月半も努力して身に付けたブラインドタッチが、まったく活かせない。腹が立ったというより、情けない気持ちになりました。
自分の身に付けてきたスキルが、一切通用しない、地獄のような環境でした。
でも、その時ふと気付いたのです。「オアシス」の卓上型のワープロもサブ機としてその会社には供えられていたのですが、その機械にはローマ字入力のモードがあったんです。
「あ、ローマ字入力がある! これならアルファベットは覚えているし使えるかも!」と思って練習を始めました。
するともう、本当にスルスルと覚えられまして、本当に3~4日くらいで普通に文字入力できるようになったんです。
で、その時に気付いたことが三つありました。
まず一つ目。
●アルファベットとローマ字では学習の手間はまったく異なる
ということです。アルファベットを覚えているからローマ字入力がすぐに出来るようになるかと言えばそんなことはなく、それなりに練習しないと使えないんですね。それこそ「か」と打つために「ka」と打たなくてはならないので、アルファベットを覚える感覚とはまるで異なる方式なのです。
次に驚いたのが
●でもアルファベットをベースにしているからアルファベットはすぐに使えるようになる
ということです。
これはローマ字入力をしているわけですから、アルファベットのキー位置は嫌でも覚えるので完全に共用できる、ということなんです。
そして最後の3つ目が最も大切なことなんですが、
●ローマ字入力で必要なキー数は恐ろしく少ない
ということなんです。
ローマ字入力においては、たとえば「Q」とか、「V」とかは使いません。いや使わなくはないんですけど、どうしても必要ではなくて、他のキーで代用可能です。
数えてみたら19文字くらいあれば、普通の日本語は入力できるんですね。
「ええええええええー!」と驚いたんです。
僕はちゃんと使えるようになるまで76文字とか必死になって覚えようとしてたんですよ? でも、ローマ字だと20文字前後でOKなんです。とんでもない差です。
しかも、その20文字程度で日本語を打てるようになった後、アルファベット表記もブラインドタッチできるように学習しなければならないキーの数は差し引きで6文字程度だったんです。
なんじゃこりゃー! とあらためて驚いたんです。
あの僕のひと月半の努力はなんだったんだ? という気分です。
そして、驚いてはいけないのですが、この「OASYS」にローマ字入力があったように、独自のキー配列などを踏襲しているようなマシンでも、アルファベットキーだけは世界標準の配列「QWERTY」配列を採用していることが多く、そういう機械ではたいていローマ字入力も備えていたりしたわけです。
だから、短期間で修得できたうえに、汎用性も抜群と非の打ちどころのない入力方式がローマ字入力だったわけです。
僕の開発したブラインドタッチ練習ソフト「WEEK」が、ローマ字入力専用である、ということは、こういう実体験が裏にあるんですね。
実用性で考えれば、ローマ字入力の打鍵スピードで、充分「文章を考える速度」には追いつきます。だからローマ字入力で必要十分、それ以上速い入力方式を覚える必要はまったくなかった、ということです。
ということで、今日はローマ字入力についてのお話でした。
それではまた明日。
--------------[KID'S SIGNAL No.430 -了-]---------------
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木田 茂夫 :kids@kidashigeo.com
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