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2018年の「ブラックパンサー」は「とんでもない」ヒーロー映画だったのです。そしてその「主人公のいない続編」を観てきました。
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[KID'S SIGNAL] キッズシグナル●第498号●2022年11月22日(火)
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%name_sei%さん、こんにちは。
日曜日に映画「ブラックパンサー・ワカンダフォーエバー」を見てきました。
この映画はご存知の方は良く知っていると思いますが、アメコミ映画、ヒーロー映画です。
2018年に大ヒットした「ブラックパンサー」の続編になります。
日本ではアメコミ映画があまり人気がないので、この前作「ブラックパンサー」の大ヒットがどういう意味を持っていたかを知っている人など皆無に等しいと思いますので、少し解説をしたいのですが、これは一言で言うと「ブラックパワーが大爆発した映画」だったのです。
もともとアメコミ映画はアメリカ文化の上に成り立つ存在ですから、アメリカ文化の「白人中心主義(WASP:ワスプ=ホワイトアングロサクソンプロテスタント中心主義)」の縛りをモロに受けていました。
特に映画は多くの人が見るものですから、つねに「世間の常識優先」で、登場人物、特に「正義の側」はいつもWASPだったりするわけです。
そして黒人は添え物程度か、主要な役柄になってもせいぜい主人公の補佐役だったりする。
「ブラックパンサー」は、マーベルコミックの中のキャラクターなので、同じマーベルのヒーローであるアイアンマンと比べてみますが、アイアンマンに出てくる黒人というと主人公トニー・スタークの親友であるウォーマシンことジム・ローズくらい。アイアンマンと同じアイアンマンスーツは着ているけれど、本当に脇役にしかならないポジションなわけです。あとは、ほとんど白人(WASP)なわけです。
しかしブラックパンサーという映画はどういうものだったかというと、
●登場人物のほとんどが黒人であり、白人の登場人物は脇役がひとり程度。
だったのです。
おどろくなかれ、悪役ですら黒人です。
登場人物は黒人、黒人、黒人。そして、それぞれが豊かな個性を持っていて、とても魅力的。別に白人がいなくても全然問題がなかった。
そして映画全体で描かれているのは、アフリカを中心とした文化なのですね。(と言いつつ架空のアフリカ文化なんですけど。でもとにかくアメリカ文化ではない)
もうとにかく、端から端まで黒人のみの文化であり、黒人のみの世界なんですね。
で、これがヒットしなかったら話題にもならなかったでしょうけれど、もう超大ヒットしたんです。アメリカ人がこぞって観に行った。
で、もっと言うなら映画の設定として、「アフリカ大陸の中に欧米の科学技術よりもうんと進んだ科学技術を持つ国が存在しており、その国が世界に姿を現わす」という話なわけです。
超先進的な技術をもった超先進国が、いままで欧米の科学技術では探知できない秘密のベールで隠れて国家運営を続けていた、という設定なのです。
●突然に現われた欧米文化(WASP文化)を超えた黒人コミュニティ
の話なんですよ。
そして、その欧米文化をはるか下に見下ろした文明社会から、精神的にも肉体的にも優れたヒーロー「ブラックパンサー」があらわれて、黒い特殊スーツを着て、悪の黒人(欧米文化を破壊しつくせという思想のキャラクターです)と戦うというお話なわけです。
設定からしてものすごい話でして、それだけでも超絶ショックな物語だったんですね。
ブラックパンサーの大ヒットは、本当に映画業界を揺るがしたし、実際ブラックパンサーはアカデミー賞で、作曲賞・美術賞・衣装デザイン賞の3部門受賞を果たしたんです。
これは、アカデミー賞史上もっとも多くのオスカー像を手にした「ヒーロー映画」ということになるんです。
音楽・美術・衣装デザインでなぜ賞が取れたかというと、まさにその部分にアフリカ文化をベースにしたクリエイティブがあったからなんですね。
それどころかアカデミー賞の作品賞候補ともなっていて、下馬評では「もしかしたら作品賞も取れるのではないか」というところまで迫ったという画期的な映画だったのです。
そもそもアカデミー賞というのは、選考に当たる会員の94%が白人、77%が男性、そして高齢者が多数を占めています。
なので同性愛をテーマにした作品など新たな潮流への感度は鈍くなり、バイオレンス作品やコミックを原作とした作品は不利といわれているのです。
にもかかわらず、これだけの賞を取ったわけです。
もともと、アカデミー賞は、若手製作者やメディアから「白すぎるオスカー(受賞者に贈られる彫像)」などと批判されることも多かったのですが、そういう風潮の中で一石を投じる「娯楽作品」になった、ということなのです。
で、ここで本当に重要なのは、「誰もが楽しんで観られる娯楽映画だった」ということなんですね。
で、その娯楽映画としての正統性、正義感、憧れの対象としてのヒーロー像を確立していたのが、主演のチャドウィック・ボーズマンでした。
これだけの文化的軋轢のある話を、肌の色を超えて、皆から愛されるヒーローとしてブラックパンサーを印象付けたのはひとえにチャドウィック・ボーズマンの俳優としての魅力だったと言っても過言ではないでしょう。
それほど、チャドウィック・ボーズマンは魅力的な俳優さんだったのです。
清潔で、色気があり、感情と行動が一致している聡明さが感じられ、まさに「ワカンダ(映画内の架空の国家)の王」そのものだったのです。
チャドウィック・ボーズマンなくして、「ブラックパンサー」という映画はありえなかった。全米を巻き込んだ大ヒットも、アカデミーにおいての三冠達成もできなかっただろうと思います。
ところが!
この素晴らしい俳優さんが、2020年、突然に亡くなってしまうのです。
●『ブラックパンサー』のチャドウィック・ボーズマンが死去。
https://www.vogue.co.jp/celebrity/article/black-panther-chadwick-boseman-dead-of-cancer-at-43
がんだったんですね。それを公表せず4年もの間闘病されていたわけです。
これはもう、大変なショックでした。
ブラックパンサーは世界的ヒットでしたから、世界中が驚いたと言っても良いはずです。
もう、僕も大ショックで当時あわててブログを書いてます。
●ものすごいショックで、残念とかのレベルやないなぁ。「ブラックパンサー」のチャドウィック・ボーズマン死去。ウソやろ。悲しすぎる。
https://kidscomp.exblog.jp/29488605/
あまりにショックだったので、「ブラックパンサー」がどういう映画だったのかの解説も入れてない。アメコミ映画に冷淡な日本の一般の方々には、全然伝わらない記事ですな、これ。
ともあれ、これが一作目の「ブラックパンサー」だったのです。
そして、その続編を見てきた、という話です。
えー、長くなったので、話はここまでにしておきますが、主役を演じていた俳優が亡くなったのに、監督は、「ブラックパンサーはチャドウィック・ボーズマン以外考えられない」として、代役は立てず、CG合成でキャラクターを作るなどもせず、続編を撮り切りました。
それだけでもすごいんですけど、これがまた映画として傑作だったので、僕としてはすごく感心したんですけど、まぁそれはまた書きましょう。
とにかく、ワカンダ・フォーエバー! です。
ではまた明日。
--------------[KID'S SIGNAL No.498 -了-]---------------
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