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広告における「パクリ」の避け方はどうすればいいかご存知ですか?
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      [KID'S SIGNAL]  キッズシグナル●第56号●
      葉月(8月) 6日  /  2015年9月18日(水)
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さて、このしばらくの間、オリンピックのエンブレム問題で世間はにぎわっていました。

確かに、あのデザイナーさんの作品には他の方の制作物をそのまま流用したものなども散見され、「これはアウトだなぁ」とは思うのですが、

・シンプルでわかりやすいデザイン
・各種のツールに展開しやすい構造

などを重視すれば、どうしたってああいうエンブレムは、似てくるものなのではないかなぁと僕自身は思います。

個人的には、あのエンブレムはあまり面白みがないところが好きではないというのがひとつと、「公募で決定したものに瑕疵があるなら、次点の作品などを繰り上げて採用すればいいのに、どうして白紙になるのか?」というところの方が気になりますが。
(そういう自動的な選出構造が見られないから「出来レースだったのだろう」という推測が成立してしまうわけです。実際には「品質」という専門家にしかわからない要素があるので、一概には言えないのですが。)

それはそれとして、広告において、「パクリ」であるとか、各種の権利関係などをできるだけクリアにする方法があります。
それはいったいどういう方法か?

というと、とにかく「オリジナル」に意識をフォーカスし続ける、ということですね。
これはビジネスでの競争を考えれば、当たり前の事で、競合他社との違いをどう打ち出すのか?というのと同じことなんです。

たとえばプリンターなら、印字速度が速いとか、大きなサイズを出力できるとか、サイズが小さくて本棚にも入るとか。そういう「その製品にしかない要素」に徹底フォーカスするという事は普通にやることです。

あのエンブレムにしても、Tの一文字とか日の丸の○だとか、もともと素材の選び方が汎用的過ぎた、ということはあるのではないでしょうか。

たとえば、TではなくTOKYO とかTKOとかまで使えば似る可能性はぐっと減ったはずです。
いっそ地図で東京都のシルエットを活用するとかしても良かったかもしれません。
また、開催年の2020年にフォーカスしてデザインしていれば、他のデザインに似る可能性は低くなっていたのではないでしょうか?

逆に、汎用的なテーマを選ぶにしても、オリンピックという事で言えば「肉体の祭典」という部分がありますから、たとえば「筋肉」というものをエンブレムテーマに選ぶ、という手法だってあったはずです。筋肉なら、パラリンピックとも共通する内容ですし、白筋と赤筋とを交互にマーク化しても印象的なものになったでしょうし、少なくともどこかの劇場のロゴと似る可能性はうんと低くなったはずです。

つまり。

パクリを避けるためには、「そのテーマ(製品・商品・サービス)にぐっと寄る」という意識が必要なんですね。
それこそ、拡大鏡でググググググっと寄って見てみるイメージです。

言ったら悪いですが、あのシンボルマークには、そういう「テーマ選定」の段階でのアイディアやひらめきが感じられなかったわけです。

実はこれ、広告や販促ツールの制作の過程を考えると、実は「デザイン」ではなく「企画」の分野になります。だから、あのデザインには「企画」が欠けていたともいえるわけです。

この企画を考えるのは、別にデザイナーさんでも良いのですが、やはりこういう切り口を考えるのが得意なのはライターの方でしょう。
そういう意味ではデザイナーだけにエンブレムのすべてを任せていた、あの体制そのものが無茶なのであって、少しあのデザイナーさんが可哀想でもあります。(ただ、他の作品の「パクリ」がちょっとひどすぎましたね。)

オリンピックくらいの大きなイベントになれば、コンセプトデザイナーであるとか、総合プロデューサーのような人が必要なはずなのですが、そういうポジションの人が見当たらないのが残念なところです。

パンフレットや広告などの制作物の場合、最終的なデザインの良しあしには、実はこのようにツールの方向性やテーマを支える骨格の決め方のようなライティング要素が影響することはとても多いのです。
ですから、良いデザインの裏に、しっかりしたライターが考え方の基礎をかっちり固めているということは普通のことです。

なにより、そういう骨格があると、デザイナーさんもオリジナリティが高く、より印象的なデザインを仕上げやすくなるものなのです。

効果的で、「真似」ではない販促ツールを制作したいなら、企画やライティングなど、見えない部分にも気配りしてみてください。


[了]


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