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映画の評価は「人それぞれ」ではなくておおむね正確な「絶対評価」というものは「ある」んです。
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[KID'S SIGNAL] キッズシグナル●第658号●2023年5月19日(金)
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%name_sei%さん、こんにちは。
先日からずっと「宮崎駿批判」みたいなことをやってますけど、今日もその続きです。
で、僕の「『カリオストロの城』批判」は、未来少年コナンみたいなルパンは許せないという話でした。これは当時も「コナンルパン」と揶揄する人がけっこういたみたいなので、まぁひとつの批判の方向ではあります。
で、ひとつお伝えしておかないといけないのは、当時は「カリオストロの城」というのは興行的には失敗の部類bだった、ということです。評価が上がってくるのは後年ですね。このあたりの話はまたするとして、当時はまだ宮崎駿神話なんてものはなかったのです。
で、昨日の話の終わりに書いたのは、僕が嫌いなのは宮崎駿がルパンを「イタリア人」に設定したのは、高畑勲との確執があったからだ、という話でした。ま、ちょっと言い方は極端なんですけど、おおむねそういう話なんです。
このあたり、解説を入れないと全然さっぱり話が見えないと思うので、少し書いておきたいなと思いました。
まず、高畑勲という人の話をしておかないとどうしようもないので説明しますが、スタジオジブリというアニメ制作会社において、著名クリエイターというのは宮崎駿と高畑勲の二枚看板だったわけです。
で、宮崎駿は名前も売れているし、作品も多いから良く知られていますから説明不要なわけですが、高畑勲は解説しないと分からない。
高畑勲監督作品として一番有名なのは「火垂るの墓」だろうと思われますが、それ以前に何よりも「アルプスの少女ハイジ」「母を訪ねて三千里」「赤毛のアン」という世界名作劇場のアニメシリーズが、もっとも親しまれている作品だろうと思います。
この世界名作劇場シリーズは、日常生活の動作をていねいに描くことで作品世界にリアリティを与え、アニメの単純化された線一本の表現でも、高い説得力を創出して、深い感動を与えるという独自の手法を生み出したわけで、高畑勲という作家がどれだけ高い演出力を持っていたかが分かろうというものです。
特に記しておくべき事は高畑勲は「絵を描くことができない」という、純粋演出家である、ということが重要なんです。作品世界を「表現技法」で理解するのではなく、社会認識とか、論理構造とかで把握して、深い感動を生み出している、本物の「監督」なわけです。
僕自身は世界名作劇場はチラ観しかしてませんし、「火垂るの墓」はあまりに悲しそうな話なので、これは観れないなぁと観ていないので評価できる立場にはないんですけど、高畑作品では唯一「じゃりン子チエ」の劇場映画版だけは観ておりまして、実に素晴らしい作品だなぁと感じ入っている次第です。あれは本当に良かった。
で、アニメや映画を良し悪しを語る時に、よくありがちな言い方で「そんなん、個人の好みの違いなんだから、評価はいろいろでしょ」とか言う言い方があるわけです。
そういう考え方に対しては「いや、それは違うんだよ。世の中にはキチンとしっかりとした絶対的評価軸というものは存在していて、それは簡単には動かせないものなんだよ」という事実で、釘を刺しておかないといけないよなぁと常々思っているのです。
で、高畑勲という人は、そういう意味でつねに作品の質がとても高い人で、2018年に亡くなられた時も、日本だけでなく、世界中のメディアがその死を報じたくらいなのです。
作品数が少ないので話題にはなりにくいですが、アメリカの映画評価サイトのロッテントマトなどでは宮崎駿よりつねに高得点を得ています。
とくにスタジオジブリなどは、海外のテレビネットワークに作品の放映権などを売ったりしなければなりませんので、そういう販売エージェントのような人たちに作品をまとめて権利販売などをお願いしたりするわけですが、近年の作品の販売を依頼しても、そういうエージェントがはっきりと「たくさん作品を担当させてもらってるが、一本だけ飛びぬけて品質の高い作品がある」と言ったのが「かぐや姫の物語」で、この作品は先のロッテントマトで評論家による評価で、100点という評価が出たそうです。ありえない点数ですね。通常では。
で、そういう販売エージェントとかは、それこそテレビネットワークなどに売り込むわけですから、作品の質をシビアに判定する目利きが商売なわけです。その視野には当然「再放送」などの繰り返しに耐えるかどうかの長期的展望や市場性の判定もあるわけです。なので、そんな「個人の好み」というような、あまっちょろい評価軸ではないんですね。
だから、世間で言う「アニメや映画なんて個人の好みだから」という評価軸は、どこまで行っても「素人判断」であって、プロの判定に耐えうるものではないと思います。
で、僕もできるだけ、そういう判定力を身に着けたいとつねに意識している、ということでもあるわけです。
で。話は戻りまして、「宮崎駿と高畑勲の確執」の話です。
当然、宮崎駿は高畑勲の演出力の高さなんて、端から分かってるわけです。
でも、だからこそ、宮崎駿はいろいろとへそを曲げてしまうわけですよ。
宮崎駿は純粋に「天才アニメーター」なんです。それがどれほど天才的であるかは、また書くとして、その表現力の高さを、高畑勲は「いや、ちょっと待て、それはおかしいだろう」と言うわけです。
いや、それほど言わなかったと思うのですが、まぁ一言の注意がものすごく重いですわね。
しかも高畑勲は「絵で語る」なんてことはしませんから。
社会構造の把握と、論理整合性でしょう、おそらく。
これに反論できないとダメなわけです。
だから、宮崎駿は、言わなくてもいい、おかしな屁理屈を周りに言ってしまうんですね。
それこそ「フランス貴族じゃなくて、イタリアの若造なんだ」とかね。
いや、言うなよ!
と僕は思うんですけど、まぁ言わないといてられないんでしょうねぇ。高畑勲を一緒に会社をやってるわけですから。
(ちなみに高畑勲は「クリエイターは経営にタッチするべきではない」というスタンスからスタジオジブリの経営側には入っておりません。すごいですな、これも。でも宮崎さんにしたらたまりませんよ、これは。)
ま、ということで、宮崎駿の「カリオストロの城」はコナンルパンが大嫌いだったし、それをまた「フランス人じゃなくイタリア人」とか屁理屈でエクスキューズする宮崎駿が大嫌いだったんですけど、高畑勲との確執があったのだ、という話を聞いて、とたんに怒りは半分以下に減りましたね。
「そらまぁしゃーないかー。しゃーないわなぁ」という感じであります。
宮崎駿は「天才アニメーター」ではあるけど「映画監督」としては並以下ですから。
あー、話が本当に長くなりました。
明日もちょっと関連した話を書くかもです。
ではでは。
--------------[KID'S SIGNAL No.658 -了-]---------------
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