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「スマホの前にpalmがあった」としても、先行者と改革者の両輪が存在していないと、なかなか世の中には定着しないんですよね。残念なことに。
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[KID'S SIGNAL] キッズシグナル●第1024号●2024年6月4日(火)
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読者さん、こんにちは。
さてさて、昔話というのは、ついつい長くなってしまうもので、だからこそあまり好きではないんです。昔を懐かしんでいても、あまり前向きなことにつながらないので。
じゃあ、なんでこんな昔話をながながとやっているかと言うと、最近ネットで新製品などを検索していても、デジタル系のツールで画期的なものを見かけないよなぁという思いが強いからなんですね。
昨日でやっと「iPad・タブレット」の話まで行けました。で、「スマホの前にpalmがあった」のと同じように、「iPad・タブレット」の前にはMicrosoftの「タブレットPC」があったわけです。
こういう技術革新というのは、おおむね「先行者」がいて、その技術を定着させる「改革者」がいて世の中全体が変革する、というパターンになっていると思うんですね。
だから、いま「新しい画期的なツール」が登場してきて定着して世の中を変える、という流れがなかなか生まれにくいのは、この「先行者」も「改革者」も手薄になったからなんじゃないの? という気がしてるんです。
で、その先行者と改革者の層の薄さというのは、
●スティーブ・ジョブズが死んで、日本経済が弱ってしまった。
という部分が、かなり大きい気がして仕方ないわけです。
日本の技術者というのは、各家電メーカーなどが改良を繰り返す過程で本当に画期的なことを生み出していくわけです。
モバイルギアなどは純粋に日本の技術ですが、Palmの場合はOSの日本語化を日本人の技術者の人が作り上げたというのが大きくて、日本市場という実験場がなければpalmの快進撃はなかったと思います。
それに加えて、パッと見海外の技術のように見えて実は日本人が作った技術というのもたくさんあって、たとえばWindowsの右クリックやドラッグアンドドロップの仕組みを作ったのは日本人の中島聡さんですし、IBMのノートパソコンだったThinkPadも、もっとも革新的な「トラックポイント」を発案開発したのは日本IBMの大和研究所だったのは有名な話です。
日本の技術者の数多くが、こういう風に企業の中にキチンと存在して、次々に新技術を生み出し続けている環境がないと、真に実用的な技術は育たないわけです。
で、こういう改革的で実用的な技術というものは、それ自体の力だけだと、一部の分かっている者だけの利便性にとどまってしまって、洗練されたマーケティング手法がないと、なかなか世の中に定着しないんですよね。
で、その改革敵な部分を、冷徹なマーケティング志向と、口先三寸のセンセーショナルな語り口で世の中に定着させていったのがスティーブ・ジョブズだったと思うのです。
そもそも、最初のマックが「キーボードのないマウスだけで使えるコンピュータ」として登場してきたこと自体がスティーブ・ジョブズのハッタリ的マーケティングの嚆矢ともいえるもので、そんなもの、キーボードもなくてパソコンが使えるはずはないんですけど、世の中のバカの気持ちをどれだけあおるかがマーケティングの重要なポイントだと理解していたジョブズは実にうまくバカをだましたと言えると思います。
マックがもし、キーボードも標準で装備して発売されていたら、おそらくヒットにはつながらなかったでしょう。
「キーボードがなけりゃ使えるはずないやん」と分かっていたデジタル技術に精通しているような人間をジョブズは狙わなかった。その外側のもっと広い市場を考えて「キーボードのいらないパソコン」を演出して、マウスというものを世の中に定着させてしまったわけです。
なので、数多くの技術者たちの実用的で画期的な発明や突飛な「先行品」は、ジョブズのような天才的マーケッターがいないと、なかなか定着しないわけです。
で、いま、「スマホの前にpalmがあった」ように、いまジョブズがいれば、あの口先三寸のすばらしいプレゼンテーションで、世の中に大定着させるだろうなぁと思える技術が登場してきているわけです。
というか、これもまた「先行者」がどっかーんと存在してるんですけど、うーん、ジョブズがいないから定着しないんじゃないかなぁ。どうかなぁ。
ということで、この話はまた明日。
ではでは。
--------------[KID'S SIGNAL No.1024 -了-]---------------