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ノートパソコンでは「ポインティングデバイス」の進化はかなり大きな技術革新のうねりだったのです。でもそれはPCには技術流入がありませんでした。
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[KID'S SIGNAL] キッズシグナル●第1045号●2024年6月25日(火)
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読者さん、こんにちは。
昨日は、トラックポイントが生まれるまでの「ノートパソコンの歴史」について話ました。
ノートパソコンの歴史を刻むエポックメイキングな製品について書きましたが、それぞれについて製品写真をリンクしておきましょう。
■まず、世界初のノートパソコンDynaBook J-3100 SS001 (1989年 2.7kg 198,000円)です。
https://asset.watch.impress.co.jp/img/pcw/docs/1352/683/j3100.jpg
■次に、「マウス付き」のノートパソコン初号機Macintosh Portable(1989年 8kg 80万円)。
https://s3.ap-northeast-1.amazonaws.com/statics.pen-online.jp/image/upload/news/nobuyuki-hayashi-04/nobuyuki-hayashi-04_ETJ3hgE.jpg
■キーボード配置を決定した歴史的名作 PowerBook 100(1991年 2.7kg US$2,300:日本円で2十数万円程度)
https://s3.ap-northeast-1.amazonaws.com/statics.pen-online.jp/image/upload/news/nobuyuki-hayashi-04/nobuyuki-hayashi-04_GJgxNhQ.jpg
■トラックポイントという革命的ポインティングデバイスをはじめて備えたThinkPad 700C(1992年 3.4kg US$4,699:日本円で5十数万円)
https://asset.watch.impress.co.jp/img/pcw/docs/1463/363/002_o.jpg
という流れになります。
これが昨日のお話でした。
で、一番のポイントは、マウスカーソルを操作するための道具「ポインティングデバイス」の話なわけです。
これは、机上に置くデスクトップパソコンでは、いつまでもマウスのままだったけど(多分いまでも)、ノートパソコンにおいては日々進化があった、というのが昨日の話なんですね。
で、「携帯するPCにおいて、ポインティングデバイスはどうあるべき?」と、徹底追及して生まれたのがスティック形式の「トラックポイント」であり、そしてそれは、マウスの問題点を完全に克服していたという話なわけです。
いや、この「完全に克服している」ということ自体、知ってる人はとても少ないのですけれど。
というか、世の中まだまだ、ごく普通にマウスという「できそこないのポインティングデバイス」を使うのが「普通」ですからねぇ。
このトラックポイントが登場した翌年くらいに、僕はThinkpadのもう少し安くなった(それでも40万くらいしたと思いますが)ThinkPad750cを購入して3~5年程度は使ったと思うのです。
よく覚えているのは、750cはディスプレイとキーボードが完全に水平の板状になるくらいまっすぐ一直線になったので、その板状の750cを手に持ってソファに寝っ転がって、良くパソコンを使っていたということです。
のちに「ソファでパソコン」というのは iPad が登場した時にスティーブ・ジョブズがプレゼンテーションで実演してアピールしてましたが、僕にとっては新鮮でもなんでもなかったんですよね。「板状のPCをソファで使う」なんて普通だったから。
この時点で、僕にとって「机という水平面がなければ使いようがないマウス」という存在自体、前時代の遺物としか思えないものになっていました。
本当に「トラックポイント以前」と「以降」ではパソコン操作の在り方が根本から変わったと思います。
しかし、この技術革新は、ノートパソコンだけの進化で、デスクトップパソコンには広がりませんでした。
簡単に言ってしまえば、この「トラックポイント」に関してはIBM→Lenoboの特許技術として囲い込まれたままだった、ということがひとつと、もうひとつは、薄い板の上に指を滑らせて使う「トラックパッド」が汎用技術として広がってノートパソコンの「ポインティングデバイス」として定着してしまったからです。
この「トラックパッド」は、特許も取らず汎用技術になったし、しかも薄くて厚みもないので、ノートパソコンに装備するには便利で、「マウスの代わり」としてノートパソコンの必須の「おまけ」になってしまいました。もう、トラックパッドがついてないノートパソコンは売れないのだと思います。
トラックポイントという素晴らしいポインティングデバイスがありながら、現在のThinkPadには、トラックパッドも装備されているのが、その世の流れを象徴していると思います。
これは前にも書きましたが、洗濯機の「風呂水ホース」と同じことです。本来不要なのに、洗濯素人には必須に思えるので、メーカー側が用意するしかない、という話でしょう。
で、あくまで「マウスの代わり」なので、明らかにマウスより操作性は落ちます。
なので、ノートパソコンには標準装備されていても、デスクトップPCにはトラックパッドは装備されません。マウスを使えば良いからです。
こういう流れがあって、デスクトップパソコンの「ポインティングデバイス」に関しては、1989年にAppleが出した「トラックボール付きノートパソコン」より旧世代のまま、化石のごとく「使いにくい道具」が世間に定着したままになっている、ということなのです。
ということで、この話、まだ続きます。
また明日。
--------------[KID'S SIGNAL No.1045 -了-]---------------