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今日はちょっと「映像のウソを見破れるか」という話をしたいと思います。意外に難しいかも知れません。

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[KID'S SIGNAL] キッズシグナル●第1274号●2025年2月11日(火)
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読者さん、こんにちは。
今日は、ちょっとお昼に来客がありまして、ずいぶんと発行が遅れてしまいました。すみません。

で、今日はちょっと「映像のウソを見破れるか?」という話をしたいと思います。

もうずいぶん昔の話ですが、ある政治家が検察による家宅捜索を受けた映像がテレビのニュースで流れたんですね。
政治家の家に踏み込んでいくところがテレビに映っていました。

これ、おかしいの分かります?
普通は抜き打ちで行わないと証拠隠滅される可能性のある家宅捜索が、いつ捜索に入るのかの日時情報が、テレビ局に知られていた、ということです。ありえない話です。
これはこの手の捜索に詳しい記者とかならすぐにわかります。でも一般人には分かりづらい。
裏にどんなカラクリがあったのかまでは分かりませんけど、まぁ何か裏はあったでしょう。

また別の話。ある政治家が、ホテルのロビーで、裏金5億円の受け渡しをした、というニュースが流れました。
人目につかないように、アタッシェケースに現金を入れ、双方の秘書が一人ずつ来て手渡したのだと言う。
これは話題になって、その政治家はピンチに陥りましたが、このニュースは明らかな「ウソ」だとすぐにバレました。
なぜか? アタッシェケースには5億円も入らないからです。入ってもせいぜい5千万円。5億円だとかなり大きめの紙のショッピングバッグ(70cm×40cm×15cmくらい)が、3~5袋は必要で、とうてい一人で持ち運べるサイズではないからです。
これは銀行員ならすぐにわかるレベルのウソです。一般人だとどの程度の人が見抜けるでしょうか? ちょっとわかりません。

また、別の政治家の家宅捜索はテレビで放映された時は、次々に自宅から捜査員が段ボール箱を手に、証拠をさっそうと運び出していました。何人も何人もが、次々に段ボール箱を運び出して「これはすごい捜査が始まったぞ」とみんなが興奮したわけです。
でも、これもまた「ウソ」なんですね。
段ボールいっぱいに、紙の資料とかが入っていたら、これは「さっそうと持ち出す」なんてことはできません。重くて重くて。
で、実際に家宅捜索に入られた政治家が言ってたのはこうです。

「あいつらテレビ映りのことしか考えてないから、あの段ボール箱の中身なんて手帳一冊とか、そんなもんなんですよ。それをいかにも大量の資料を持ち出したみたいにテレビに写させて、大捜査が行われたみたいにしてるの。テレビの視聴者はそういうのにすぐにダマされるのね」

このウソは、記者や銀行員ではなく、引っ越し業者の人なら騙されませんが、ほとんどの一般人は騙されるでしょう。

さて。

これがね、「映像のウソ」という奴なんですよ。
機密であるべき家宅捜索の時間がバレてる。裏金と言えばアタッシェケースに入ってるものだという思い込み。段ボールで運び出すなら大量の資料が詰まってる。

政治ドラマとかで「観たようなシーン」があるから、こういう現実に存在している「ウソ」に気づけないんですね。

これねぇ、普通の一般人のかなりの人が騙されてると思うんです。
で、こういうウソで多くの政治家が実際に失脚したりしてるわけです。

どうなん? って思うんですよね。
これ、テレビドラマとかを自堕落に見てるだけだと、こういうウソに騙されてしまうわけです。

●「ドラマと現実の区別をつける能力が低下している」

から起きている事柄なわけです。

ここがね、僕が「スーパーヒーロー映画は観なければならない種類の映画だ」と主張する、根幹なんですよ。

雑なドラマだと、「映像のウソ」とか「映像の文法」とかで、適当にストーリーを進められるわけです。
で、そういう適当な進め方をしてるドラマを無批判に観ていると、こういうおかしな部分が見抜けなくなるわけです。

じゃぁスーパーヒーロー物を見たらどうなるのか? というと、たとえば宇宙人が出てくる話なら「宇宙人の資料って重さはどのくらい?」とかを想像せざるを得なくなります。

なので、捜査員が段ボール箱を軽々と持っていたら「あの紙箱の中身はずいぶんと軽いんだよね」というところまで想像力を働かせなければならないわけです。

超怪力のスーパーヒーローとか、空を飛ぶスーパーヒーローなんて、存在していない、「嘘っぱち」だからこそ、そういう「細部」の部分は、自分自身の想像力で埋めないと観てられないわけです。

つまり、

●想像力をフル活用しないとドラマを楽しめない

という構造を、もともと持っているのがスーパーヒーローものでして、だからこそ、

●映像と現実の区別を明確に切り分けられる

ということなんです。
スーパーヒーロー物を好んで見る人は、必ず、こういう現実と映像上の架空の世界を「異なるもの」として切り分けて鑑賞できるわけです。

つまり「ウソとホントの境界線をしっかりと意識している」ということなんですね。

でもまぁ、普通のドラマしか見てないような人だと、家宅捜索に踏み込むシーンがテレビで流されてても「おかしい」とは思わないし、「5億円入ったアタッシェケース」も存在していると思っているし、捜査員がさっそうと運び出す段ボールの重さがそうとう軽い、というところまでは気づかないものなのです。

でも、スーパーヒーロー物や完全な作り話と最初から分かっている作品などだと、こういう「映像のウソ」「ありきたりな映像の文法」などは一発で見破るようになるわけです。

だからね。スーパーヒーロー物は「観なくちゃいけないよ」と僕は言うわけです。
ちゃんと想像力を使う訓練をしてないと、いくらでも映像でだまされちゃうんだよ。マジで。

という話なわけです。
だからみなさん、スーパーヒーロー物はしっかり見ましょうね。

ということで、今日のメルマガはここまで。
ではまた明日。


--------------[KID'S SIGNAL No.1274 -了- ]---------------


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