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「またしばらくしてから書こうと思います」と言いましたが、やっぱり昨日の続きを今日書きます。忘れてしまいそうなので。

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[KID'S SIGNAL] キッズシグナル●第1307号●2025年3月16日(日)
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読者さん、こんにちは。
昨日の「映像中毒=ひきこもり」論の「映像文法の暴走」の話、「またしばらくしてから書こうと思います。」と書きましたが、いろいろ事例があるうちのいくつかを書いてしまわないと忘れてしまいそうなので、今日書いてしまいましょう。

「映像文法の暴走」に関しては、ほんとうにいろいろ存在していると思うのですが、ようは「本来は架空の出来事なのに、それを現実社会の判定基準として使ってしまっている」という「現実と架空の逆転現象」が起きているのが問題なわけです。

架空の世界は「完全なウソ」なのだから、現実社会で架空の世界と同じ現象が現れたら、それは「え? これ、ウソなんじゃないの?」と疑ってかからないとダメなんですけど、映像中毒に陥っていると、この「正気の判断」ができなくなってしまうわけです。

で、その実例として昨日は「ワイロはアタッシェケースに入っている」という「映像文法」の例を出しました。
今日は、

●「検察官は大量の資料を強制捜査で大量の段ボール箱に入れてで持ち帰る」

という「映像文法」について話したいと思います。

これはその昔、ある大物政治家が、検察によって強制捜査を受けた時の話です。

強制捜査を受けた政治家の自宅が検察官によって強制捜査をされる映像がテレビで流れたわけです。検察官が捜査令状を出して自宅に入り、証拠物件として、大量の段ボール箱をその家から運び出す、というシーンが流されました。

「正義の検察官」が、段ボール箱を両手で抱えて、その家からさっそうと出てきて、その段ボール箱を次々にトラックに詰め込んでいくわけです。何個も、何十個もの段ボール箱が、それこそものすごい数、次々と次々と運び込まれる。

でもね、これ、実際に捜索を受けた政治家自身が語ってましたが、あの段ボール箱の中身ってどんなものなのかご存知ですか?
せいぜい手帳一冊、事務用ファイル一冊程度だったんですよ!

つまり、テレビ写りを考えて、段ボール箱による「カサ増し」がされてたわけです。
なんじゃそりゃ! と思いませんか?
そもそも検察官が「さっそうと証拠物件を押さえる」という映像を撮りたかったのだから、段ボール箱に大量に資料を入れてしまったら、「えっちらおっちら運ぶ土方仕事」になってしまって全然さっそうとした「正義の検察官」にならないわけです。

そもそも、検察の強制捜査の日時を、テレビ局が知っていて、それを待ち構えて撮影する、という段取りがついていなければ、こんなシーンは撮影できないわけです。

このあたりの話は、映像関係の仕事をしている人なら「なんで強制捜査の日時をテレビ局が知ってるんや? 誰がリークした? おかしいやろ」と気づくわけです。

で、さっそうと段ボール箱を運ぶ検察官の体の動きを見れば、運送会社の兄ちゃんなら「あの段ボール箱、むちゃ軽いな。中身なんも入ってへんのとちゃうか?」と分かるわけです。

分かりますか?
「現実の働く現場」にいる人なら、こんなチンケな「映像文法」なんか、すぐに「ウソだ」と見破れるわけです。
「現場を持つプロ」というのは、そういう細かい真実は見抜けます。

しかし、現実や現場を持たずに「映像文法」だけに浸っている人は、それに気づかないわけです。

インターネットが登場するまでは「テレビ」という「映像文法のお化け」が社会に巣くっていたので(いまでも巣くっていますが)、現場のプロより「映像中毒のひきこもり」の方が数が多かったわけです。

「あの箱、むちゃ軽いぞ」

と、気づく人の方が少なかったわけです。

●現実を良く知る「本物のプロ」はマイナーな存在

なわけです。
ここ、超重要な話なので、キチンと押さえておいてくださいね。

とにかく真実とか現実とか、ほんとうの話とかは、「プロ」の方がよく知っている、ということですね。そしてそれは「現実社会をしっかり見ている」ということ。つまりは「架空の世界である映像世界の映像文法に縛られない」ということなわけです。

高畑勲が「現実に帰れない作品なんか作ったらダメだろう」と宮崎駿を叱りつけていたのは、概念的にはこういう話なわけです。

超重要な話だとは思いませんか?
僕はこれはとても重要な話だと思っているのです。

ということで、今日のメルマガはここまで。
ではまた明日。


--------------[KID'S SIGNAL No.1307 -了- ]---------------


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