[1386号] ●バックナンバー一覧に戻る|←前号へ|次号へ→
世間のタイピング学習の「スピード神話」の根本的な矛盾点について、ひとつだけ指摘しておきます。
_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/
[KID'S SIGNAL] キッズシグナル●第1386号●2025年6月3日(火)
_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/
----------------------------------------
このメルマガは、
■「メモ・ノート・手帳を使いこなすためのStationery Book 42」■
をダウンロードくださった方を中心に、毎日発行でお届けしています。
読み落としがある場合は、メルマガ本文のすぐ後に、
バックナンバーページへのリンクがありますので、そちらからご確認ください。
----------------------------------------
読者さん、こんにちは。
連日、「WEEK」の販売ページの読み直しと修正を繰り返しておるわけですが、まぁ書くべきことが意外に多く、ほんとうに四苦八苦しております。
伝わるように書こうとすると、ほんとうにいろいろな工夫が必要でウンウン唸ってばかりなのであります。
さて、それで昨日書けなかった「入力スピード」について、もう少しだけ書いておきたいと思うのです。
通常、一般の方が「ブラインドタッチ練習ソフト」として活用しているのは、多くの場合、ネットで流通している無料の「ゲームタイプの練習ソフト」が多いんですね。
また、市販の練習ソフトでも大ヒットしたものは、ことごとく「ゲームタイプ」だったわけです。
前々から指摘してるように、こういう「ゲームタイプ」のソフトで練習すると、どうしても「キーボードを見るクセ」がついてしまうので、やらない方が良いんですね。ゲームタイプの練習ソフトは。
逆に、あまり売れてはいませんが、いまでも、ほんとうにキチンとブラインドタッチが身に付くようなタイピング練習ソフトは存在しているんですが、そういうソフトはローマ字入力とJISかな入力の両方をサポートしていて(商品として売るならお客様の要望に応えてJISかな入力もローマ字入力も対応しましょう、という考え方です。それはそれで悪くはないんですが)、両方とも習得しようとかすると、とんでもなく長い習得期間になってしまうし、そもそも「指単位(指ごとに担当するキーだけを練習する方式)」の練習が、とても単調で、なかなか個人が自宅でコツコツ続けられるような内容ではなかったりします。
なので、世間的には「ゲームタイプの練習ソフトで入力スピードを競う」というのが、タイピング練習の王道という扱いになってしまっています。
なので、多くの方は
●ブラインドタッチは、我流であっても入力スピードが上がれば達成できるもの。
という意識になってしまってるんですね。
で、ゲームタイプの練習ソフトを提供しているような会社のホームページなどを見ると、
●入力速度世界一の超高速タイピングマスター
と呼ばれるような人の「練習方法」とかが掲載されていたりするわけです。
で、そういう練習方法などを見ると、僕なんかは、
「そんな些末なこと、どーでもええわボケ! クソみたいなマニアック情報流すな! 害悪じゃ!」
と思うくらいひどいわけです。
なにせ、
「こういうキーワードを打つ時の指の動きはホームポジションに戻していたら一打当たりの時間が長くなりますから、ショートカットして、ホームポジションに戻さずにこのキーからこのキーに直接移動させましょう」
とかやってるわけです。
あかんて。
それ。
「ホームポジションを1打ごとに戻す」も出来てない人がほとんどなのに、「ホームポジションを守らなくても良い」とか言うてどうする。
と、思いますし、何より、
●そんなに入力スピードを上げる必要性自体、社会的にもうほとんど存在してない。
ということがあるわけです。
これねぇ、ちょっと良く考えてもらいたいんですが、果たしてそんな超絶高速入力スピードが必要なのか? という問いかけ自体が必要なんですよ。
そもそも、こういう「入力スピード日本一」とかいうような人は、かなーり特殊な人なわけです。
昨日、僕が掲載した、
●入力スピードとブラインドタッチ習得期間との関係
http://www.kidashigeo.com/week/img/lp_img/oikosi_span.jpg
の図をもう一度見てください。
入力スピードの一番速いのはいったい誰になっていますか?
●与えられたテキストを入力するプロのタイピスト
となってますよね?
これ、重要なのは、入力スピードを測るテストというのは、昔々から何も条件が変わってませんで、出題側が用意した文章を、どれだけ速く打てるか? しか測定してないわけです。(というか、そういう方法でしか入力技能を測定できないんですが。)
でも、現実にパソコンで文章を打つ場合に、この「用意されたテキストを打つ」なんてことは、もういまやニーズ自体が存在しないわけですよ。
昔は、書籍の情報をテキスト起こししてデータにするとか、新聞記事の切り抜きをテキスト化する、なんて仕事があったのかも知れませんが、いまやそんな仕事は皆無です。
だって、テキストがあるなら写真を撮ってOCRアプリに通せば一瞬で文字変換してくれるんですから。変換率も95%くらいは行ってますから、必要な技能は「読み直して誤変換を見つける技能」と「的確にすばやく誤変換を修正する能力」であって、タイピング能力なんかほとんど関係ない。
だから、そういうテキスト入力の分野でパソコンと争っても意味なんか一切ありません。そもそも勝てるわけないんだから。
プロのタイピストなんて、いまやそもそも必要のない存在なわけです。しかもその「超高速入力」のスキルって「与えられたテキスト」での話でしかないわけですね。そんな「与えられたテキストをわざわざタイピングする」なんてシチュエーション自体が、そもそも、もう存在していないでしょう。
いま、2025年の環境では、現実にテキスト入力が必要なのは、「自分で文章を考える」場合なわけです。特にAI活用の質問文(プロンプト)作成なんかは、ブラインドタッチができるかどうかが最重要の技能と言えます。
で、こういう用途では、どう考えても「文章を考えるための時間が必要」になのだから、与えられたテキストを入力するより遅くなって当然なんですよね。入力スピードを上げること自体には、それほど重要性はないわけです。
でも、世間の「タイピング練習常識」は違います。
●入力スピード一択
なんですよ。
だって、ずーーーーーーっと「ゲームタイプ」の練習ソフトで「入力スピードこそ神」というスタンスで判定してきたわけですから。
ゲームは絶対的に「スピード競争」なんですから。
だからもう、これ、根本的におかしいんですよね。
そもそも、
●習得に時間がかかるだろうからゲームタイプの練習ソフトで練習しよう
という考え方自体が間違ってるわけです。
最初のボタンの掛け違いが、ここまで大きく方向を誤らせる、ということなんですね。
いや、ほんま、ものすごい大問題だと思っております。
ということで、今日のメルマガはここまで。
ではまた明日お会いしましょう。
--------------[KID'S SIGNAL No.1386 -了- ]---------------