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同じ映画が日米で評価が大きく異なる理由は、「日本の不況」と、「日本映画界の異常」の複合技だ、という話をします。

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[KID'S SIGNAL] キッズシグナル●第1446号●2025年8月2日(土)
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読者さん、こんにちは。

昨日の話の続きです。日米ではそもそも基本的な物価が倍くらい価格差があるという事を言いました。
以下の資料がそのデータです。

https://www.japancorporate.com/wp-content/uploads/2024/06/2024.06-JP-US-ratio1_cost-living.jpg

このデータを見ると、生活費(ガソリン・家賃)で1.4倍、食費がコーラから野菜までいろいろ価格差があるけれど平均して2.2倍、外食費もおおむね2倍程度になっています。

日本で1500円の定食が、アメリカではおおむね3000円くらい、ということです。

ただ、注目して欲しいのは「娯楽費」なんですね。野球とディズニーランドが比較対象になってますが、なんと

●3倍以上

なんです。
野球のチケットが日本で2200円、アメリカでは7000円、ディズニーランドのチケットが日本で8000円、アメリカでは26000円ですから、軽く3倍は越えています。

で、どうも、この「娯楽」に関しては「アメリカが高価格」というのはジャンルを問わずのようでして、たとえば書籍なら、

一般書籍(文庫・新書) 日本:約800~1,200円  アメリカ:約$15~$25(約2,130~3,550円)
学術雑誌(図書館向け) 日本:年間購読で数万円  アメリカ:年間購読で$300~$1,000(約42,000~142,000円)

と、やはり3倍くらいなんですね。そして舞台などのチケットも、

●日本の舞台チケット(例:チケットぴあ掲載作品)
『リア王』(Bunkamura)    約8,000~13,000円
『爆烈忠臣蔵』(劇団☆新感線)  約9,000~14,000円

●アメリカの舞台チケット(例:ブロードウェイ)
『ハミルトン』  $150~$300(約21,300~42,600円)
『ライオンキング』$120~$250(約17,000~35,500円)

倍以上の価格で、3倍近いわけです。
美術館・博物館の入場料比較で見ても、

●日本:一般的な入場料(常設展)約500~1,500円
●アメリカ:          約20~30ドル(約3,000~4,500円)

●日本:東京国立博物館:1,000円前後 国立西洋美術館:500円~
●メトロポリタン美術館:25ドル(3500円程度) MoMA(ニューヨーク近代美術館):25ドル(3500円程度)

と、やっぱり3倍以上です。
アメリカの「娯楽系サービス」の入場料とか料金はたいていが「日本の3倍」と考えて差し支えないわけです。

ところが!
ここに例外がひとつ存在しているのですね。

それは「映画の入場料」なんです。

これは驚くなかれ、日本の方が高かったりするわけです。

映画入場料日米比較
●一般料金 アメリカ:約8~10ドル(約1,140~1,430円)  日本:約1,900円(TOHOシネマズ基準)

と、日本の方が、アメリカの1.5倍ほど高い。最近の円安のせいで多少価格差は少なくなってきてますが、一時期は日本の入場料の方が倍近い価格だったんですね。
上記は都市部での「一般料金」なのですが、アメリカでは地方に行くと、映画はうんと安くなるんですね。

地域差 アメリカ:都市部より20~30%安い傾向(800円~1000円程度)  日本:全国ほぼ一律(1900円~)

地方においては、もう完全に倍の価格です。映画の割引率を見ても、

●割引料金
アメリカ:マチネ(昼間の上映):6~8ドル(900円~)
日本:学生・シニア割引レディースデイ:1,200円:ファーストデイ:1,300円

と、アメリカが昼間上映などのように「みんなに一斉に安くする」割引をしているのに対して、日本では特定の人に対してだけなんですね。

●みんなに一斉に安くする

という発想がない。

これ、そもそもすごくおかしな話でして、もともと映画は「上映期間中に多くの人に見てもらうもの」だから、客数の減る昼間を半額にするとかは、ごくごく当たり前かつ、普通の割引制度なわけです。
上映期間が決まっている中で少しでも稼ごうとするなら、昼間の空席ほどもったいないものはありません。スーパーの閉店前割引と同じで「客が入らない=機会損失」は、損切りをして母数を稼ぐのは当たり前のことなんです。
多くの人に見てもらえれば、人気のない作品もそれなりに口コミなどで広がる可能性も出てくるわけですから。

こういうことを考え合わせると、
物価のレートで見れば、日本の映画入場料は、アメリカの入場料1500円に対して、その3分の1である500円であっても全然おかしくないわけです。
平日の昼間なら、300円であってもまったくおかしくはない価格のはずなんですね。

(ただまぁ、日本は長年の異様に高い入場料のせいで劇場映画人口が減ってしまっていて、スクリーンの数自体が人口比で3分の1まで落ちているので、いますぐ500円、300円にしてもペイはしないでしょうけど。スクリーンの数を増やしつつ、価格を下げる、という対策が必要な状態です。)

ともかく、

●日本の映画入場料は異常に高い

ということだけは、はっきりわかると思います。
書籍よりも、舞台よりも、美術館よりも、とび抜けにとび抜けて、超高価格なのだ、ということが分かると思います。

でも、これだけ高価格でも、特定のシリーズなどを見たい人は観に行きますよね? でしょ?
となると、これは当然、

●少しでも「薄味」の映画であったら、一気に評価が下がる

という傾向が出てくるわけです。

これ、日本の映画界のかなり重要な問題だと、僕は考えているのです。

ということで、この話はまだもうちょっと続きます。
証拠集めをしてたら、膨大な長さの記事になってしまいました。

ということで、今日のメルマガはここまで。
ではまた明日。


--------------[KID'S SIGNAL No.1446 -了- ]---------------


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