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日本の映画業界は実はかなり異常。でも、多くの人がその問題に気づいていません。
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[KID'S SIGNAL] キッズシグナル●第1447号●2025年8月3日(日)
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読者さん、こんにちは。
昨日書いた「日米物価比較から見た映画料金の異常」についての続きです。
昨日はあまりに細かい指摘だったので、復習がてら整理します。
昨日も書いたように、そもそも日本とアメリカでは物価の「レート」が違います。
●日米物価比較
https://www.japancorporate.com/wp-content/uploads/2024/06/2024.06-JP-US-ratio1_cost-living.jpg
生活費や食費・外食費はおおむね2倍。キャベツが日本で200円なら、アメリカでは400円ということですね。
これは、年収も
●平均年収(税引前)日本:約443万円(2023年) アメリカ:約930万円(62,000ドル)
で、ほぼ倍ですから、当然の話なわけです。
で、昨日も書いたように、なぜか娯楽費はアメリカでは日本の3倍の価格なんですね。
●野球のチケット 日本:2200円 アメリカ:7000円
●ディズニーランド 日本:8000円 アメリカ:26000円
●一般書籍(文庫・新書) 日本:約800~1,200円 アメリカ:約$15~$25(約2,130~3,550円)
●舞台 日本:『リア王』 約8,000~13,000円 アメリカ『ハミルトン』 $150~$300(約21,300~42,600円)
●美術館 日本:入場料(常設展)約500~1,500円 アメリカ:約20~30ドル(約3,000~4,500円)
もう、絵に描いたように、軒並み3倍です。
ところが、映画だけは「逆ザヤ現象」が出ていて、なんとなんと日本の方が高いわけです。
●映画一般料金 日本:約1,900円(大手シネコン基準:全国一律) アメリカ:約8~10ドル(約1,140~1,430円)
●映画割引 日本:学生・シニアなど(1200円~1300円) アメリカ:マチネ(昼間の上映):6~8ドル(900円~)
日本の映画入場料は全国一律でおおむね大人ひとり1900円です。これがアメリカだとおおむね1200円~1500円(ただし都市部)。地方館とか、マチネ(平日昼間料金)だと900円まで下がるわけです。
もし、
●日本の娯楽費はアメリカの3分の1
という標準的価格レートが適応されるのであれば、地方の映画館なんて、入場料は、なんとなんと
●300円
にならないといけない、という話なわけです。
わかります? この話。
デフレ下の日本の映画館においては、映画一本を見るための価格は、地方館なら\300円が適正価格なわけです。
なのに1900円が一般料金なのですから、実質的には適正価格の6.3倍もの入場料を支払わせているのが、日本の映画業界なのだ、ということなんです。
これはあまりにえげつないわけです。
「アメリカで平均年収950万円の人が900円で楽しんでいるもの」なのだから「日本の平均年収450万円の人なら400円くらい」であって当然だし、「アメリカでは2130円の書籍が日本では800円」であるなら「アメリカでの映画900円なら、日本では300円」が当然でしょ? という話です。
だから日本の映画業界というのは、本当に、かなり、そうとうに、あくどく、ひどいヤクザな業界なわけです。
ものすごくひどいぼったくり状態なんだ、ということを、ぜひぜひ、みなさんに知っていただきたいわけです。
映画業界だけが本当にヒドイわけですから。書籍、芝居、美術館、テーマパーク、野球観戦などは世界標準なわけです。
日本の映画業界だけが不健全で、ぼったくりで、えげつない、銭ゲバ業界なのだ、ということです。
ここ、ほんとうに理解して欲しいです。
で、この話題を書き始めた最初の話に戻ります。
マーベルシネマティックユニバース=MCUの「ファンタスティック4」の評価がアメリカと日本でかなり異なっているという話です。
アメリカでは観客のスコアが92点(100点満点で)と大変な高評価なのに、日本では極端な「賛否両論」になっているんです。
で、その背景には多分、この「ファンタスティック4」という映画のテーマが、
●子供を守る
という家族愛になっていることが大きく影響しているのだと思うわけです。
日本は30年続くデフレ不況でして、とくに被害を受けているのは現在40代から50代の「ロスジェネ」と呼ばれる世代です。
まずこの世代は正規雇用されていないような人がけっこうたくさん存在してます。で、そういう人は結婚したくてもできないわけです。
だから、まるで「結婚して子供作るのが当たり前」という前提のような「ファンタスティック4」に、そもそも親近感を持ちたくても持てないわけです。
実際、僕は年を食ってから結婚して子供ができた人間なので、この映画で出てくる子育て関係の話にはすごく感情移入してしまうんですけど、多分ロスジェネで結婚してない人には響かないだろうし、そもそもそういう人間の感情のヒダを描いているようなシーンは、ただ冗長にしか見えないだろうと思うわけです。
そこに、6.3倍の入場料問題がのしかかります。
高い値段を支払っているんだから、満足したい、というのは当たり前ですよね? で、ぼったくりで超高い映画だけれど、わざわざ劇場に足を運ぶ人というのは、相当に「濃い映画ファン」または「濃いMCUファン」ということになります。
そういう人が、アクションシーンよりも夫婦の機微などに重きを置きがちな映画を観てどう思うか? という話になるわけです。
「高い金払って見に来てるんだ、もっとド派手な演出のアクションシーンを見せてくれよ」という心情になるのも致し方ないと思いませんか?
高い入場料というのは、結果的に観客を
●高くても観るマニアック層
●高い金を損しないように安全パイしか見ない超保守層
に二分してしまうと思うのです。
日本では、たとえば「ドラえもん」だとか「名探偵コナン」のような家族で安心して見に行けるような、
●超安全パイ映画
しかヒットしないという状況が出来上がっています。それはやはり入場料が高すぎるからこそなんですね。
「ファンタスティック4」がアメリカでは評価がとても高いのに、日本では賛否両論になるのは、この分断された観客層がそのまま「賛否」につながっているからではないか? という気がしています。
日本の映画は入場料が高いがゆえ、安全パイを狙ってばかりで、コナンやドラえもんは「家族」で観に来るから「稼げる」し、制作されているわけです。で、独身の人間や個人を対象にした映画は、もうストーリーなど二の次で、ひたすら
●客を呼べるスター
の映画しか作らないわけです。「推し活」という奴ですね。映画のように「超お高い趣味」にお金を出すような人はマニアックな「推し活」をしている人以外はいない。だから何人のファンを呼べるスターが出ているか? というところからしか映画企画が立ち上がらないわけです。
そういう状況からすると、「ファンタスティック4」は、「マーベルのマニアックな推し活」ファンにはウケない内容なので、ボロカスに言われてしまうというわけです。
この状況、ものすごく不幸だと思うんですが、でもこれが日本の状況なんですよね。
いろいろな意味で僕は大変憂いているのです。
ということで、今日のメルマガはここまで。
ではまた明日。
--------------[KID'S SIGNAL No.1447 -了- ]---------------