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「先延ばし」と「前倒し」、どっちが正しいかは「わからない」のが現実なのに、世間的には「先延ばし」が悪者にされていますよね。おかしいと思う。

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[KID'S SIGNAL] キッズシグナル●第1450号●2025年8月6日(水)
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読者さん、こんにちは。
今日はちょっと例のWEEKの販売ページについて進展があったのでお知らせします。
販売ページを作っていると、とにかく「言っておくべきこと」がやたらと多くて、書けば書くほど「いや、そうじゃない、これを言う前にこういう前提を話しておかないと」となっていって、どんどん長くなって、暗礁に乗り上げてしまったんです。

でも実は、先日、ある思いつきがハッとひらめきまして、そこから一気に大幅短縮化できるところにポジショニングが変わってしまったんです。
で、いまはとにかくガサガサ、どんどん削っていってるところなんです。

とはいえ、削ると、また一から書き直しの部分もありまして、それはそれなりに時間がかかってるんですけど、ただまぁ光明は見えてきたので、とりあえずお知らせまで。

ということで、今日は久しぶりにちょっと書籍紹介をしたいと思います。
紹介する本はこちら。

●締め切りより早く提出されたレポートはなぜつまらないのか 「先延ばし」と「前倒し」の心理学 (光文社新書 1355) 新書 - 2025/4/16
https://amzn.to/46KsA1o

という書籍です。

これ、タイトルを見ただけで「それそれ!」と思って即買いしたんです。

書店のですね、自己啓発の棚とか見ていただくと分かるんですけど、とにかく世間的には「早くやる」のが正しいことになっているわけです。
それはもう、ほんとうに判でついたように同じことを書いているわけです。

これがねぇ、もう、僕には「バカ」にしか見えなくて、どうにも気分が悪かったわけです。

もうね、本音で言わせてもらうなら、

●すぐやる奴はバカである。

という一言で全部終わるとすら思ってるわけです。
で、じゃあなぜ「すぐやる」が良くないのかと言うと、

●詐欺師に騙される
●自分が詐欺師になる

の二つがあるからですね。
世の中の「すぐやる教」のほとんどは、「無自覚な詐欺師の養成思想」なんじゃないのか? と思ってるくらいです。

昔お仕事させていただいていたPCの周辺機器のメーカーさんの社是が「拙速を重んずる」で、これはこれでものすごく意義深いと思ってるし、僕自身もう少し「拙速」で動くべきだとも思ってるんですが、そもそもの自分の個性とかは、そう簡単には変わらないし、重要な本質部分は変えちゃいけないわけですしね。

とくにブラインドタッチのように「世の中に間違った常識」がはびこっている時は、一発で本質が伝わって、誰も反論できないくらいしっかりとした背景を伝達しないと、それこそ「どうせ拙速で人をだまそうとしてる輩だろう」としか思われないわけで、そういうところは注意しないといけないなぁと思っているわけです。

で、この「締め切りより早く提出されたレポートは…」(以降「なぜつま」と略します)は、考え方の対立項として「先延ばし」と「前倒し」の2つの考え方を設定して、それを心理学的な実験結果とともに考察している本で、なかなか面白いんですね。

やはり締め切りより早めにレポートを出すような「前倒し」は、いわば「脳の負担を軽くしたい」というような衝動的な選択なのだ、ということが実験で分かってくるんですね。

で、これ、おもしろいのが、やはりどうしても、締め切りギリギリまで作業をしないような行動は「先延ばし」として「良くない選択」として実験や研究がたくさんあって、いろいろ事例も豊富なわけです。
で、たいていの結論というか、そもそもそういう実験を考え出してるのが「先延ばしは良くない」という大前提があるから、その「良くないことをなくすためにどうすればいいのか」を解明しようと実験や事例が豊富なわけです。

いや、もう、僕に言わせれば、その実験立案から話がおかしいだろうと思うんですけどね。課題が与えられていて締め切りまで、ほんとうに何も考えてない奴はたしかに話にならないわけですけど、作業はしてなくてもじっくり考えてる場合は多いわけで、そこの評価はまぁ「できない」のが普通だと思うんですよ。

この書籍は「先延ばし」も「前倒し」もどちらも特性があるわけだから、どちらの考え方が正しいというわけでもない、という中立の立場で書かれています。そういう意味では世間の流れとは全然違う視点なので面白いんですけど、そうじゃなくて「先延ばししてでも塾考する価値」についても考えて欲しいよなぁというのが正直な感想です。

書籍としてはあまり極端なことは書けないので、結論をこの本では「先延ばし派」と「前倒し派」がともに協力しあって仕事をするには? というところに落とし込んでるわけです。

ま、それはそれで角が立たなくていいけど、ちょっとなぁ、とは思います。
だっておおむね「前倒し派」はバカなんですもの。ちゃんと考えてない人間がほとんど。考えるのがしんどいから「とにかくやっちゃえ」なんですよ。
そんなもん、そもそもおかしいから。

もちろん、仕事である限り締め切りは守らないといけないし、限られた期間で最上の質を求めるべきなのですが、それを達成するには、適正な

●前倒しの手法
●先延ばしの選択

の二つが必要なのであって、この異なる価値観をいっしょくたにしていること自体が間違いだと思うわけです。

単純に言ってしまうと、

●前倒しすべきは「下書き」
●先延ばしすべきは「最終作業」

なわけです。
まず下書きで詳細な設計図を組み立てる、ということをやらないと、締め切り間際の作業がものすごく非効率になるわけです。だから、詳細な設計が何をやるにしても必要で、それは早くやればやるほどいい。

つまり、当たり前の話なんですけど「いそいでやったものの質は低い」ということで、それは「たたき台にしかならない」ということなんです。
こんなこと当たり前なんですけど、なぜかこの「たたき台」レベルのものを「最終成果物だ」とするような風潮が最近はすごく多いわけです。

いやいや、あかんから。質低いから。

と思うんですけど、世の常識は「早い方がいい」なんですよねぇ。

で、僕はライターなので、多くのライターがみな一様に言う事があって、

●原稿は寝かせないとダメ

という話があるわけです。
とにかく早めに下書きとか構成案とかには手をつけて「考える作業」というのはやるわけですが、いったんしっかり考えたら、

●とにかく最低一晩は寝かさないとダメ

というのがあるわけです。
寝かしたかどうかは、ほんとうにレベルが違うわけですよ。一晩寝かした後はまったく異次元のアイディアが出てきたりするんです。

で、このことは僕個人の体験談でもありますが、ある印刷会社の印刷物の企画プロデュースをされていたディレクターさんが、

「ライターの人はみなさん、全員同じこと言いはりますよねぇ。面白いなぁ」

と言っておられたのが、すごく印象的だったのです。

「そうか、僕だけやなかったんや」って思いました。

結局ね、「無意識」なんですよ。
一回、「無意識」のフィルターを通さないと、本質的な解決策が出てこないわけです。

それを何度も原稿を書く過程で、ライターをやってる人間は、みんな体験しているってことなわけです。

そもそも「言葉」というのは「無意識」からしか出てこないんですよね。
適切な表現も、やはりちゃんと「寝かし」を入れないと、通り一篇の言い方になってしまって、誰の心にもささらない伝え方になりがちなわけです。
だから「寝かし」が必要なわけでして。

上記の本は、そういうことを考えると、ものすごく浅い内容ではあるんですが、「早けりゃいい」というだけの価値観には偏っていないのは面白いと思います。
まぁまぁ面白い書籍でした。
興味のある方はぜひ。

ということで、今日のメルマガはここまで。
ではまた明日。


--------------[KID'S SIGNAL No.1450 -了- ]---------------


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