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「SHOGUN 将軍」を見たのですが、「ゴジラー1.0」との大きな違いを実感しました。

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[KID'S SIGNAL] キッズシグナル●第959号●2024年3月31日(日)
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読者さん、こんにちは。

先日、いま全世界で話題のハリウッド時代劇「SHOGUN 将軍」(Disney+での配信)を全10話中の3話まで観ました。
いやー、これがなかなか面白くて、ぐいぐいと引き込まれる内容なのですね。

関ヶ原の闘い前の駆け引きをモデルに、全く新しい物語を作ってるわけですけど、国内の対立軸とは別にカソリックとプロテスタントとの駆け引きがあり、イギリスとポルトガルの世界征服計画があり、そういう大潮流の中で、誠実さと謀略との騙し合い、伺い合いがあり、その構造の複雑さがたまらんわけです。

主人公の虎長(真田広之)は家康をモデルにしてるんでしょうが、実際には豊臣秀吉は欧米の世界戦略も見抜いていたし、当然、宣教師たちの世界戦略なども熟知していて、秀吉は欧州の列強諸国から恐れられていた、というのが歴史的事実らしいんですよね。
(そもそも織田信長の時代にすでに世界で最も多く銃を日本は所持していたそうですから。たった2丁の種子島から完全コピーを作り上げていたという技術力の高さです。)

当然家康だって欧州の世界侵略計画などよくわかっていたはずですけど、このドラマでは、そのあたりを少しずつ虎長が世界の策略を理解していき、徐々に暴いて行くと言う趣向になっていて、そこいらがなかなか面白い。

その辺のわかりやすさと複雑さのバランスがちょうど良い感じです。

で、すごく思うのが、真田広之のがんばりのおかげだと思うのですが、「日本人が観て腹が立たない」ドラマ表現になっているということ。
日本の時代劇制作スタッフを連れていき、所作や小道具にいたるまで、日本文化の伝統がしっかりと息づいています。
そこがすごくいい。

日本人が問題なく楽しめる、ということなんですね。

そこでハッと気づいたのが「ゴジラ-1.0」なんです。
僕はもう、あの映画が嫌いで嫌いで仕方ないんですけど、それはやっぱり「世界で唯一、原爆被害を受けた国」である日本の映画なのに、その部分があまりに弱い、というのはかなり大きいと思ったわけです。

やっぱりここはしっかり描いてもらわないと困るよなぁと思う。そもそも戦争というのは「軍服を着たもの同士が争う」というのが大前提の国際的ルールであって、一般市民を巻き込んで殺戮を行ったアメリカのやり方を許してはいけないわけです。特に日本人なら。

でも、「ゴジラ-1.0」のゴジラって、まぁせいぜいマーベルに出てくるハルクがガンマ線で突然変異を起こしたのと同程度くらいのイメージでしか語られていないわけです。

そりゃないよなぁって思う。
そんな映画を日本人が作るなよって思う。
そんな程度の映画を「面白い」とか褒めるなよって思う。
そんな現実社会と遊離した映画がアカデミー賞を取ったとしても、それは現実のアメリカの戦争犯罪を糊塗するのを手伝ってしまってるって事じゃないかとしか思えないんですね。

で、多分それに近い感想を感じた人はけっこう多いと思う。
映画.com という映画ファンの集まるサイトの評価を見ても

アカデミー賞を取ったあとの「ゴジラ-1.0」が5点満点の4.0点なんですね。取る前はせいぜい3.7点程度だった。でも、1954年の初代「ゴジラ」は、4.3点。アカデミー賞を取る前でも4.1点くらいは取っていたわけです。70年前の映画に勝ててないんですね。
また、Youtube などで評価を見ても「ゴジラ-1.0」は賛否両論です。以下のファンが選ぶベスト40で、20位。まぁそんなもんでしょ。日本人みんながもろ手を挙げて喝采は送らないと思う。

●【映画ファン1893人が選んだ】2023年 新作映画ベスト【TOP40】
https://www.youtube.com/watch?v=XZ383u7WrCY

で、映画ファンのサイトを見ても、被爆国としてのアプローチの弱さを訴える人はけっこうおられました。
ここで日本が第二次世界大戦で受けた被害を整理すると、

●東京大空襲[1944.11.24-1945.8.15]10万人
●大阪大空襲[1945.3.13-1945.8.14]1万人
●広島への原爆投下[1945.8.6]9~16万6千人
●長崎への原爆投下[1945.8.9]6万 ー 8万人死亡
 ▼原爆による死亡者 15万 ー 24万6千人死亡

という形で、26万人もの「一般人」が亡くなってます。実際僕の母親は東京大空襲の体験者でして、被害者がまだ存命なんですよ。
そういうお話を、あまり軽く描かれても困るよなぁって思うわけです。

で、初代ゴジラという映画は、

●初代ゴジラ上映
1954年11月3日

という日付でして、原爆投下から9年経っていて、第五福竜丸事件の半年後に作られたものなわけです。

●第五福竜丸事件[1954.3.1]
米国・ソ連の核兵器開発が急進展した冷戦時代に、アメリカ合衆国がビキニ環礁で行ったテラー・ウラム型水素爆弾実験により、多量の放射性降下物(死の灰)を浴びた、乗組員23名の遠洋マグロ漁船。無線長久保山愛吉が、被爆した1954年3月1日から約半年後の9月23日に死亡した。

戦後すぐは、原爆も「アメリカの新型爆弾」としか話題になっておらず、その恐ろしさが人づてに伝わるのに最低でも1年はかかってます。(当初半年はGHQによる厳戒態勢が取られていたはずです)

だから1954年なわけです。

だからこういうことを見ても、「アカデミー賞を取った」とか素直に喜べないんですよね。
それは「SHOGUN 将軍」を見てつくづく思った。「SHOGUN 将軍」は胸を張って、「これが日本の時代劇なんです」という気になるんですが「ゴジラ-1.0」はとてもじゃないですけど、そう思えない。
(そもそも放射能の半減期が10万年というやっかいな存在に、個人がたった一機の戦闘機に積んだ爆薬で対抗して勝てる、という設定をしてる段階で反核を訴えたり、被害にあってる人たちを、バカにしてると思う。)

どうせなら、日本人として世界に胸を張れる映画を観たいなぁと思います。
ほんとに。

ということで、今日のメルマガはここまで。
ではまた明日。


--------------[KID'S SIGNAL No.959 -了-]---------------


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